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名古屋地方裁判所 平成元年(行ウ)2号 判決

愛知県豊田市堤町上町五〇番地

原告

新實貞雄

同県岡崎市明大寺町一丁目四六番地

被告

岡崎税務署長

小柳津一成

右指定代理人

木田正喜

今野高明

小川知洋

石川誠治

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六一年三月三日付でした原告の昭和五五年分以後の所得税の青色申告承認取消処分、並びに同月一一日付でした昭和五五年ないし同五九年分の所得税の各更正のうち総所得金額が別表1に記載の確定申告欄記載の事業所得の金額(ただし、昭和五五年分については、修正申告欄記載の事業所得の金額)を超える部分及び各加算税の賦課決定処分(ただし、賦課決定処分については、いずれも異議決定及び審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  本案前の答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、医薬品、化粧品小売業を営む、青色申告の承認を受けている者であるが、別表1の確定申告欄に記載のとおり、昭和五五年分、同五六年分、同五七年分、同五八年分及び同五九年分(以下併せて「本件各係争年分」という。)の各所得税の青色申告をした。

2  被告は、昭和六一年三月三日付で、原告に対して昭和五五年分以後の所得税の青色申告承認取消処分(以下「本件取消処分」という。)をし、同月一一日付で、本件各係争年分の所得額を別表1の更正処分欄に記載の金額とする各更正(以下「本件各更正」という。)をし、かつ、別表1の更正処分に係る賦課決定処分欄に記載の各賦課決定(以下「本件各賦課決定」といい、本件各更正と併せて「本件課税処分」という。)をした。

3  原告は、被告に対し、本件取消処分に対し昭和六一年四月二一日付で、本件課税処分に対し同月二二日付で、それぞれ異議申立てをしたところ、被告は、本件取消処分については同年七月二一日付で異議申立てを棄却する旨の異議決定をし、本件課税処分については同月二二日付で一部取消しの異議決定をし、原告は、そのころ右各異議決定を受領した。

4  原告は、右各異議決定を不服として、同年八月一九日付で、国税不服審判所長に対し審査請求を申し立てたが、同所長は、昭和六二年九月二二日付で、本件取消処分及び本件各更正については棄却の、本件各賦課決定については一部取消しの裁決(以下「本件裁決」という。)をし、同裁決書謄本(以下「本件裁決書謄本」という。)は、遅くとも同年九月三〇日までに原告方に送達された。

5  本件各処分は、いずれも事実誤認の違法がある。

6  よつて、原告は、本件各処分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

1  原告は、本件裁決書謄本が遅くとも昭和六二年九月三〇日までに原告方に送達されたことを自認しているので、同日が本件裁決の日となるところ、行訴法一四条三項、四項によれば、同日から一年以内に本件訴えを提起すべきことになる。

2  また、本件裁決書謄本が送達された右昭和六二年九月三〇日に原告は本件裁決のあつたことを知つたと推認されるところ、同条一項、四項によれば、原告は、同日から三か月以内に本件訴えを提起すべきことになる。

3  しかるに、原告が本件訴えを提起したのは平成元年一月一九日であるから、本件訴えは、同条一項、三項及び四項各所定の出訴期間をいずれも徒過した不適法な訴えというべきである。

三  被告の本案前の主張に対する原告の答弁

本件裁決書謄本は、遅くとも昭和六二年九月三〇日までに原告方に送達されたが、重度障害者である原告の母がこれを受け取り、同年一〇月頃に、歳暮等のパンフレット等と一緒に原告方事務所にしまいこんだため、実際に原告が本件裁決書謄本を発見して本件裁決のあつたことを知つたのは昭和六三年一〇月ころであつた。したがつて、原告が本件訴えを平成元年一月一九日に提起したとしても、行訴法一四条一項、四項所定の出訴期間は徒過していないし、同条三項、四項所定の出訴期間を徒過したことについては、同条三項ただし書の「正当な理由」があるというべきである。

第三証拠

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これらをここに引用する。

理由

一  本件訴えが行訴法一四条三項、四項所定の出訴期間内になされたかについて判断するに、課税訴訟に対する審査請求に対する裁決は請求人に対し裁決書謄本を送達して行うものである(国税通則法八四条三項、一〇一条一項)から、行訴法一四条三項にいう「裁決の日」とは、裁決書謄本の送達が適法になされた日を指し、したがつて、当該裁決に係る課税処分等の取消の訴えは、右裁決の日、すなわち、裁決書謄本の送達のあつた日を起算日として一年以内に提起しなければならないことになる。しかるに、本件裁決書謄本は遅くとも昭和六二年九月三〇日までに原告方に送達されたことは当事者間に争いがないのであるから、本件訴えは、昭和六三年九月三〇日の経過をもつて行訴法一四条三項、四項所定の一年の出訴期間を徒過していることになる。

なお、原告は、被告の本案前の主張に対する原告の答弁に記載の事情から、本件訴えが右出訴期間を徒過して行われたことにつき原告に行訴法一四条三項ただし書の「正当な理由」がある旨主張し、それに沿う原告本人尋問の結果もあるが、原告の主張するような事情が仮にあつたとしても、右事由は、同項ただし書にいう「正当な理由」に当たらないことは明白である。

二  以上の次第で、本件訴えは、行訴法一四条三項、四項所定の出訴期間を徒過した不適法なものであるから、その余の点について判断するまでもなくこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浦野雄幸 裁判官 岩倉広修 裁判官 佐藤真弘)

別表一

〈省略〉

別表二

〈省略〉

注 △印を付したのは損金の金額である。

別表三

〈省略〉

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